追記)「フレームは『しなり』が大事!」と考えているのは日本のライダーだけと言っても間違い無いです。KOXXのミーティングで「フレームはしならないとダメだって!」と言ってケニーやベニートに大爆笑されたのもずいぶん前の話です。2008年現在、多くのメーカーは「フレームはより硬く・より軽い方が良い」という考えでフレームを作ってます。
身体能力だけで跳べるなら、そんなフレームでも良いだろうけど、日本人が大きく跳ぶにはやっぱり『しなり』を使うしかないと思うのです。(2008/11/24)
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   良く語られる“しなり”はトラ車にとってとても重要な要素です。

“しなる”とはつまり“たわむ・曲がる”ということ、プラスチックの下敷きを考えてください。硬い物より柔らかいものの方が良く“しなる”のはわかりますね? 下敷きをググッと曲げてぱっと手を離すと「ビヨヨ〜ン」と跳ね返ってくる、トライアルバイクにおいてはこの反動の力を上に跳んだり前に進む力に換える訳です。
「金属で出来たフレームが曲がるんかぃ・・・?」となんだかおかしな気がするのも当然ですね。単純に考えて金属が曲がるとは考えにくいです。
でも、じゃあ実際にどのくらい曲がる・・・というかフレームが動いているかを実際に見てみましょう。お手持ちのバイクにまたがり、効き足をペダルに乗せて逆足を地面に着く。フロントのブレーキをしっかりロックして、後輪のブレーキをはなしておいて下さい。この状態で思いっきりペダルをふみ込むと、BBのあたりが横方向にグググっと動くはずです。
フレームの形、材料によってどのくらい動くかは違います。色々なバイクで試して比べると、「あぁ、このフレームは柔らかいな。こっちのフレームは硬いなと違いがわかるでしょう」
このペダルの踏み込みの実験では、チェーンのしなりやタイヤのヨレも影響するので、この実験で全てがわかるというわけではありません。あくまでもバイクを作る金属が実際に動いている事を確かめるためのものです。

 よく"しなる”フレームは良く跳ねるし、良く進む。ホッピングの一歩一歩、前輪を段差の上において“ヨイショ”と後輪を持ち上げる、そういった小さな動きのひとつひとつがとても楽に行えます。
また“しなる”フレームは衝撃の吸収にも一役かってくれます。段差を飛び降りた時に、狙った位置でピタっと止まれる、この事はトライアルでは利点ですね。また衝撃を吸収し関節等の身体への負担も軽くしてくれます。

 だからといって単純に「よくしなれば良いのか?」という事にもなりません。カタい下敷きと柔らかい下敷き、柔らかいものは少ない力で曲がるけれど、返ってくる力も弱い。対して硬い物は曲がりにくいけど少しでも曲げればボヨ〜ン!と強い力が返ってきます。

 柔らかいフレームはホッピングなどの小さな動作を助けてくれるので、長時間のライディングでも疲れにくい。でもここ一番で「とぅっ!」っと大きく跳ぶ時には少々モノ足りない。逆に硬いフレームなら、ここ一番の大技で気持ち良く飛べるけど、小さな動きには反応してくれなくて何かとバイクが重く感じる。
小さな動きにも大きな動きにも適したしなりを得られる様に・・・なかなか両立出来ないこの二つの要素をバランスよく備えたバイク作りが、今のトップメーカーの興味の対象です。

どのくらい“しなる”フレームが適当かということは個人の技術はもちろん、体重にも大きく関わってきます。また同じフレームでも、使い初めと数ヵ月後とではしなり方に大きな差が出てきます。これは、しなる=動いている内に金属が疲れてハリがなくなる=柔らかくなるためです。

 しなりの話、聞けば聞くほど、「ほな、結局どんなフレームがエエんじゃぃ?」とさらに悩みは深まるばかり・・・。ということで、以下初〜中級者さんに向けてのアドバイスです。

「フレームの大きなしなりの事は気にしなくて大丈夫です。自在にコントロール出来るのは上級者になってから。。。最初は比較的柔らかめのフレームの方が何かと楽に乗れるし、長時間のライディングでも疲れないので、より乗ることを楽しめると思います。ただ、柔らかいフレームは壊れやすいのも事実なので、長く乗るつもりならカタすぎない程度にしっかりとしたフレームをどうぞ。」

中級者さんに向けて・・・。
「"しなり”を覚えるにはまず柔らかめのフレームに乗ることをお勧めします。小さなアクションは基本動作がキッチリと出来ていればそれだけでフレームがしなるはずなので、大きなアクションの時にいかにフレームのしなりを使うか?を覚えて欲しいと思います。
ただし、自在にしなりが使える様になってきたら、一度は硬いフレームに乗る事を強くオススメします。しなりに甘えすぎると、ライダー自身のパワーや体の動きの追求をついつい忘れがちです。タイヤの使い方を覚えるのも、硬いフレームの方が向いています。
効率よくステップアップするためには、一度はじっくりと硬いフレームと付き合ってみるのも貴重な経験になると思います。」

 

  「しなり」について