200811/02

 全ての物には寿命がります。トライアルのフレームももちろん例外ではありません。
最近は材料も良くなってきて長寿のフレームも増えていますが、「中級者以上のライダーさんが乗って1年」というのが定番。パイプの薄いフレームだと、大きなヘコみなどが無くても6ヶ月くらいで壊れるという物もあります。

あくまでも「大きな負荷がかかる乗り方」をした場合の話ですので、初心者さんや体重の軽いライダーさんは強度や耐久性に関して神経質になる必要はないですよ。

 

クラック

 フレームの壊れ方の定番がこの「クラック=素材が割れる」というケースです。
スプーン曲げを考えてください。スプーンの頭を右に曲げる、まっすぐに直して今度は左に曲げる・・・コレを繰り返すと、どんどん柔らかくなって最終的にスプーンの頭がポロリと取れます。これが金属疲労。クラックも金属疲労から起こる故障です。

●写真の様にパイプ&アルミの塊やパイプとパイプを溶接したビード(溶接跡)に沿って、クラックが入るのが定番です。
クラックが入る箇所は「材料の強さが極端に異なる場所」、パイプの真ん中あたりに突然入ると言う事はありません。パイプの場合は縦にまっすぐ、かなりの長さでバシっと割れます。
●ビードの淵はくラックの名所なのですが、判断に困ることもあります。
塗装してあるフレームの場合は、ビードの淵まで塗料が流れ込んでいなかったりして・・・
塗装していないフレームの場合は、溶接跡を必ずヤスリなどで削ってます。この時、ビードの淵にヤスリが入り込まなかったりして・・・
塗装や溶接跡が黒ずんでいるため、「クラックが入った!」と勘違いしやすいです。ちょっとした違いにも気づける様に、日頃からチェックしておくのが早期発見のための重要な整備と言えます。
●クラックが入ったら・・・。
クラックは基本的に直せます。「一度クラックが入ったらそのフレームはもう終わり」とは言えません。
ただ、溶接した部分はアルミの再生が行われて強度が回復しますが、その周辺の部材は熱により強度が落ちてしまいます。一度クラックが入って、その箇所を溶接修理。その後溶接修理した周辺にクラックが入ることを「2番が入る」と言ったりもします。
同じライダーが乗るなら、同じ箇所に負担がかかることになるので、溶接修理した周辺がまた割れて、また修理してもまた割れて・・・と繰り返す事になります。こうなるとフレームは寿命と言えます。
ただし、違うライダーが乗るなら、負担のかかり方は全く異なる場合もあります。クラックが入って、溶接修理して違うライダーが乗ったら、その後クラックは入らなかったという事もありました。
一度クラックが入っても、まだまだそれが寿命とは言えません。
●クラックの修理

 大きなクラッシュの時は一発でバックリと割れることもあります。
でも、疲労から起こるクラックの場合は小さなクラックが入って、それがだんだんと大きくなっていくのが定番です。
修理するならクラックは小さい方が、溶接面積はすくなくてすむし、周囲の材料が受ける熱のダメージも少なくてすみます。クラックを早めに見つけるためには日々の整備と洗車、これに限ります。
また、クラックが入るとペシペシ・パキパキという異音が出るので発見の目安にもなります。

 上の写真の様なパイプの深いヘコみもクラックの原因になります。パイプに対して横方向に、オレンジのギザギザ線の所にクラックが入ります。
特に薄いパイプのフレームを使うライダーさんは、フレームにヘコみを作らないためのプロテクターの使用をオススメします。

 『クラックの名所』は以下の通り、クラックの早期発見のため、日常整備のついでに各所をチェックしてやってください。
もちろん、印の着いていない箇所にクラックが入る事もあります。

ネジレ

 

 写真のフレーム、BBが完全に右側に下がっています。
右足前のライダーさんで、しっかりとペダルを踏み込んでタメを作れるライダーさんだと、弱いフレームなら数日でネジレが始まります。
駆動系が右側にある都合で、右足と左足で踏み込んだ時のしなり方(BBが動く距離?)は全く違います。 同じフレームなら、右足前で乗る方がよりフレームのしなりを活用出来るとも言えますね。

写真のフレームの様にBBがネジれてしまうと、ちょっと強くペダルをこいだだけでチェーンが外れてしまうので、クラックはひとつも入っていないけどフレームとしては寿命が尽きたと言えます。

  フレームの寿命