2008/11/09

 ホースをつなぎ直したり、空気が入ったりで、オイルの充填・交換が必要な時の作業手順です。
多くのメーカーさんは、「ブレーキレバー側からオイルを押し下げてキャリパー側からオイルを抜く」という方法を推奨しているのですが、MAGURAの手法=キャリパー側からオイルを押し上げるという方法の方がエアを完全に抜きやすいと思っています。

左の写真、オレンジ色の部分がオイルの部屋、水色がピストンです。
キャリパーの左右にオイルの大きな部屋があり、細いパイプで左右がつながっています。
絵で書いているほど簡単な構造はしていないので、緑の●で示した様な箇所にエア(空気の泡)が引っかかっていた場合、レバー側からオイルを押し下げてエアを外に出し切るのは困難だと思うのです。
また、バイクにキャリパーを取り付けたままでエア抜き作業をするのもいかがなものかと思います。完全にエアを抜ききるため、大前提として、ブレーキはバイクから取り外して作業します。

「グリップを抜くのが大変なので、バイクからいちいち取り外すのは無理だ!」という方、せめてキャリパーだけでも外して作業してください。

用意する工具
 左から・・・
・スパナ(8mm、メーカーによっては7mmも必要)
・ドライバー・またはトルクス(リザーバータンクのフタを外すための工具)
・3mmアーレンキー(MAGURAだけかな?キャリパーのフタを外すための工具)
・ 注射器@(ウチでは古いMAGURAの注射器)
  &オイル交換用のエア抜きアダプターをホースをつないだ物(どちらもMAGURAのサービスキットの物)
・注射器A
・8mmのスパナ
・今回はMAGURAのロイヤルオイル

です。 オイルは必ずブレーキに適した物を使ってください。

とても重要

 オイルが一滴でもついたら、ディスクブレーキのパッドは本来の性能を発揮出来ません。
ということで、作業の前に絶対にパッドを取り外して下さい


 今回作業するブレーキはSHIMANOのマスターシリンダー。
古いブレーキにありがちですが、マスターシリンダーのフタ部分からオイルがにじんでいます。

 ということで、オイル交換のついでにリザーバータンクのゴムの中フタ(=ダイヤフラム)を新品に交換します。

コケた時に岩などで削られて、ボルトの頭も痛んでいるのであわせて交換。
自転車では日常使わない+ドライバーより、使い慣れた6角レンチで回せるボルトに交換します。
あまり使わない工具より、日常使う工具の方が良い。外出先でトラブった時の対策ですね。


 それでは作業開始。
まずは注射器にオイルを吸い上げます。
この時、空気を1cmくらい入れておくのが重要。
オイルの中に小さな気泡が入っていたら、注射器を回転させて大きな空気のかたまりをを上下させてやれば、小さな気泡も空気のかたまりの中に吸収されます。
 キャリパー側のフタ、MAGURAの場合はイモネジを3mmのアーレンキーで外します。

イモネジが刺さっていたエア抜きの穴に、オイルを充填した注射器@をとりつけ、先端のアダプターをしっかりと締め込みます(8mmスパナ)

 レバー側からオイルを押し下げるタイプのブレーキは、キャリパーのフタが 『ブリードニップル(=緩めるとまんなかの穴からオイルが出てくるボルト)』になっています。
この場合もブリードニップルを取り外し、注射器を取り付けます。

 オイルを注入する前に、リザーバータンクのオイルを注射器Aで吸い上げます。
キャリパー側から送ったオイルがリザーバータンクに上がってくるので、放っておくとダラダラと垂れ流しになってしまうので。
オイルまみれになるのが前提の作業なのですが、出来るだけキレイに終わらせたいというのが本音です。

 

 ここまでのセットが終わったら、注射器のピストンを押し込んでオイルを注入します。
キャリパーに空気が入っていると仮定して、空気がオイルの流れに乗ってレバー側に移動してくれる様に、キャリパーを傾けながらオイルを注入します。

 

 注射器@でキャリパー側からオイルを注入していくと、オイルはホースの中を通ってレバー側のリザーバータンクに上がってきます。リザーバータンクにある程度オイルがたまったら、また注射器Aでオイルを吸い取ってやります。
良く見ていれば、リザーバータンクにオイルが上がってくる中に空気が混じって「ポコ」っとか「キュゥ〜」とかいう音が聞こえるはずです。

 ある程度オイルを注入して、リザーバータンクにエアが上がってこなくなったらそのままの状態でブレーキればを握って・離してを繰り返します。

キャリパーを回転させながら、色々な角度でブレーキレバーを握って・離してを繰り返します。
オイル室の端っこに引っかかった空気の泡が老いるの流れに乗って注射器@の方向に流れる様に。

この作業を行っていると、注射器@に空気の泡が「ふよふよ〜」と上がってくる事があります。(オレンジの矢印)

極小さな泡がたくさん上がってくるなら、注射器@のホースの先端のエア抜きアダプター(水色の矢印)がしっかりしまっていない証拠。しっかりと締めこんで再度作業を行ってください。

 キャリパーをグルングルンと回転させても、エアが注射器@に上がってこなくなったら注射器@を取り外し、注射器が刺さっていたエア抜き穴にオイルを数滴たらして、フタとなるネジを取り付けます。(SHIMANOなどの場合はブリードニップル。締め付けトルク2.5〜3N.m)

 空気が抜けたかどうか?の最終チェック。
キャリパーの左右のピストンの間に指をつっこんで、ブレーキレバーを握ります。指をつっこめないタイプのキャリパーなら、スパナ等を突っ込んでスパナを持つ手で感触を確認。
レバーを1mmでも動かしたら、ピストンがピクリと動いたら空気が完全に抜けた状態。
レバーを動かしているのにキャリパーのピストンが反応しないなら、まず間違いなく空気が混入しています。


 作業をやり直す前にマスターシリンダー側のが抜けていない可能性をチェック。
マスターシリンダーを傾けたり、シリンダーが垂直になった状態でレバーを何度か握ります。
この作業で緑の●の位置にあった空気の泡が、リザーバータンク内に移動してくれればラッキー。

  油圧機構が閉じられた状態でブレーキレバーを握れば、キャリパー側のピストンがニュ〜っと出てきます。
スパナなどを使って、テコの要領でピストンを最初の位置まで押し戻します。
(一番初期のHAYESなどは、ピストンの先に細いピンが出ていて、この作業を行うと歩キット折れてしまいます。こういうブレーキの場合は使い古しのパッドを取り付けて作業を行ってください。)

この作業で上の写真の緑の●の位置にあった空気の泡が、リザーバータンク内に移動してくれればラッキー。キャリパーのピストンの間に指をつっこんでブレーキレバーを握り、エアの抜け具合をチェックして下さい。

   

 最終チェックを行って『空気が完全に抜けた!』なら、油でベタベタのブレーキを洗浄します。

ここで、注意。
市販のブレーキクリーナー・パーツクリーナーはゴム=オイルが漏れない様にガンバってくれてるオイルシールを痛めます。
クリーナーを使うなら「ゴムを痛めない」と明記している物に限定してください。
ウチでは、台所洗剤を使ってジャバジャバと水洗いしてます。(忙しい日に出荷したブレーキが湿ってたりするのはこのため・・・)
「細かいところに油が入り込んだな」と自覚している時は、RESPOのクリーナーを吹き付けた後で洗ってます。


油まみれになるのが前提の作業なので、この作業に使う工具やよく使うパーツ類を一揃い、専用のボックスに入れて収納してます。オイル交換して、空気が抜けているのを確認して、工具1式を片付けてからブレーキを洗浄。バイクにブレーキをセットする前に、油で手が汚れる用事を全て片付けておきたいというのが理由です。

他のページでもしつこく書いてますが、油分はブレーキの天敵です。パッドに油分が付着するとディスクブレーキは全くと言って良いほど仕事をしてくれません。
バイクに組み付ける前には必ず&完全に洗浄してやって下さい。

 

 油圧ディスクブレーキのオイル充填(エア抜き)