2008/06/17

 ホースをつなぎ直したり、空気が入ったりで、オイルの充填・交換が必要な時の作業手順です。 『エア抜き』と言ったりもします。あくまでもGDR流なので、他の方法があったりするかも知れません。

 大前提として、ブレーキはバイクから取り外して作業します。
「グリップを抜くのが大変なので、バイクからいちいち取り外すのは無理だ!」という方、せめてスレーブシリンダー=リム側だけでも外して作業してください。
ブレーキにほんの一粒でも空気が入っているなら、バイクから外さずに完全に抜ききるのは困難です。

作業前に、マスターシリンダー側の調整ダイアルを目一杯緩めた=マスター側のピストンが一番外に出た状態にしておいて下さい。

用意する工具

・注射器(ウチでは古いMAGURAの注射器)
・ コネクションピースにホースをつないだ物(ホースはMAGURAのサービスキットの物)
・8mmのスパナ
・3mmのアーレンキー
・オイルキャッチタンク
  (10cm程度のホースの両端にコネクションピースを差し込んで、適当な容器につないだもの。ちなみにホースは曲がりやすい用に金魚飼育用のホースです。)
・写真には写ってないけどMAGURAのロイヤルオイル

です。 オイルは必ずブレーキに適した物を使ってください。

 注射器にオイルを吸い上げます。
注射器の先にはコネクションピースを差し込んだホース。サービスキットのホースはちょいと長いので半分にカットして使ってます。
ここに「金魚ホース」を使っても良いのですが、ホース自体が硬い方が作業がしやすいですね。
サイズの合う堅めのホースがあれば、それを使ってもらって良いと思います。

オイルを吸い上げる時に1cmほど空気を入れておくのがポイントです。
完全に空気を追い出そうとすると、小さな気泡が残ってイライラする事もあります。まとまった量の空気が最初から入ってれば、注射器を傾けてゆっくりと空気を上下させてやれば、小さな気泡も簡単に消えてくれます。

 

 マスターシリンダーのボルト(プラグボルト)をゆるめて取り外します。
外した穴には 注射器を取り付けて。スパナでしっかりと締めこみます。 ここでしっかりと締めこんでないと、オイルの充填作業中に、オイル室内部に空気が入るのでしっかりと固定。

 ブレーキによっては、ホース先端のコネクションピースとマスターシリンダーの間にスキマが出来る場合がありまして、この場合は結局オイル室内に空気が入り込みます。

後の作業で「なかなか空気が抜けないな」という場合は間違いなくこの「スキマ」 が有るので、こういう場合はコネクションピースとマスターシリンダーの間にアルミのワッシャーを入れてやると効果的です。
MAGURAの純正部品のアルミワッシャー、なかなか使えます。

 コネクションピースをしっかり締めこんだら、この状態でレバーを握ります。
レバーの握る・離すを繰り返すと、ホースを伝って空気が注射器の中に上がってくるのが見えると思います。
ここでポイントになるのは、マスターシリンダーの角度を変えること。 写真の緑色の形の円筒形のオイル室を一回転させるのがポイント。
オイル室が地面と水平な状態でレバーを握る・離す、少し傾けて握る・離す、次はオイル室が垂直になる状態で握る・離す、をX軸・Y軸に対してそれぞれ一回転以上繰り返します。

写真のECHOや、2005年以降のMAGURAの場合、このオイル室が地面と水平の状態でレバーを握らないと、スムーズに空気が出て行ってくれます。


 レバーを握っても注射器内に空気が上がってこなくなったら、マスター側はOK。
次はスレーブシリンダーのボルト(ブラグボルト)を外して、オイルキャッチタンクを取り付けます。コイツのホースの先のコネクションピースはしっかりと止める必要はありません。刺さってればOK。

  ここまでのセットが終わったら、注射器のピストンを押し込んでオイルを流します。
オイルキャッチタンクのホースを見ていると、空気が流れていくのがよく判ります。

 注射器のオイルを30ccほど押し込むと、とりあえず気泡は出なくなります。
はい、ここで最大のポイント。
引き続き注射器のピストンをゆっくりと押し込みながら、スレーブシリンダーを回転させます。
写真の方向だけでなく、タテ・ヨコ・ナナメにそれぞれ1回転するように、しつこいくらいに回します。

 ナゼか?

この写真でわかる通り、スレーブシリンダーの内部は気泡=空気の粒があちこちに引っかかる形状になってます。
空気の粒が出口に向かう様に、回転させてやらなければ、完全に空気を追い出す事は難しいと思うのです。

左右両方のスレーブシリンダーをグルリグルリと回転させながらオイルを注入して、「もう空気は出ない」となれば仕上げに移りましょう。
オイルキャッチタンクを取り外し、ダメ押しに注射器のピストンを1mm押しこんで、ボルト穴がオイルで満たされている状態でボルト(プラグボルト)を締めこみます(締め付けトルク4-5N.m)。

 スレーブ側にフタをしたら、最初と同様にレバーを数回握ります。空気がマスター側のどこかに引っかかってないかの最終チェック。
何度かレバーを握って、小さな小さな気泡がいくつか上がってくるようなら、ホース先端のコネクションピースとマスターシリンダーの間に「スキマ」が有る証拠。

アルミのワッシャーを噛ませて、最初から作業を行ってください。

 レバーを握っても空気が出てこないことを確認して、注射器を取り外します。
注射器を外しながらも少しだけピストンを押し込み、ボルト穴にオイルを満たした状態でボルト(プラグボルト)を締めこみます。(締め付けトルク4-5N.m)

 空気が抜けたかどうか?の最終チェック。
最初に書き忘れてましたが、ウチのMAGURA整備BOXには使わないシューが1セット入ってます。油まみれになるのが前提の作業なので、本当に使うシューでこのテストをするのはNG。
不要なシューをスレーブシリンダーにせっとして、片手に握ります。この状態でブレーキレバーを握って、レバーを握った瞬間にスレーブシリンダーの動きを確認出来れば作業は完遂。逆に、レバーが1mmでもカラ動きする様なら(レバーを動かしてもスレーブ側に反応が無い時)は、まず間違いなくオイル室内やホース内のどこかに空気が残ってます。もう一度トライして下さい。

 最終チェックを行って『空気が完全に抜けた!』なら、油でベタベタのブレーキを洗浄します。

ここで、注意。
市販のブレーキクリーナー・パーツクリーナーはゴム=オイルが漏れない様にガンバってくれてるオイルシールを痛めます。
クリーナーを使うなら「ゴムを痛めない」と明記している物に限定してください。
ウチでは、台所洗剤を使ってジャバジャバと水洗いしてます。(忙しい日に出荷したブレーキが湿ってたりするのはこのため・・・)
「細かいところに油が入り込んだな」と自覚している時は、RESPOのクリーナーを吹き付けた後で洗ってます。


油まみれになるのが前提の作業なので、この作業に使う工具やよく使うパーツ類を一揃い、専用のボックスに入れて収納してます。オイル交換して、空気が抜けているのを確認して、工具1式を片付けてからブレーキを洗浄。バイクにブレーキをセットする前に、油で手が汚れる用事を全て片付けておきたいというのが理由です。

他のページでもしつこく書いてますが、油分はブレーキの天敵です。完全に空気が抜けたブレーキでも、ブレーキシューやりムに油が着いたら元も子も無いので、バイクにセットする前には必ず&完全に洗浄してやって下さい。

 

 油圧リムブレーキのオイル充填